野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

<こんな人がいたのか。長い間知らなかったことが(くや)しい。これほど似ているならもっと低い身分の女性でもありがたく思っただろう。ましてこの人は、亡き(はち)(みや)様はお認めにならなかったらしいが、実のお子なのだ>
(かおる)(きみ)はうれしくお思いになる。
今すぐそばへ行って、「生きていらっしゃったのですね」とおっしゃりたいくらい。

<昔の中国の皇帝(こうてい)は、地の果てまで亡き(きさき)を探しにいかせたが、使者(ししゃ)が持ち帰ったのは妃のかんざしだけだったと言う。そんなのはよけいにつらい。それに比べて私はどうだ。別の人間とは言え、これほどそっくりなら十分心が(なぐさ)められるだろう>
一目(ひとめ)でお心が(うば)われたのだから、これは運命だったのでしょうね。

(べん)(あま)は少し話をしていたけれど、すぐに自分の部屋に戻っていった。
薫の君の香りに気づいて、
<どこかで(のぞ)いていらっしゃるようだ>
と分かってしまったの。
それで無難(ぶなん)なお話だけをして下がったみたい。