薫の君はだんだん腰が痛くなっていらっしゃった。
でも、動けば気配に気づかれてしまうかもしれない。
我慢してじっとお覗きになる。
「どこからかすばらしい香りがいたしますね。尼君がお香をお焚きになっているのでしょう」
薫の君の香りだなんて夢にも思わず、若い女房がのんきに言う。
「本当にかぐわしい香りだこと。さすが都の人は優雅でいらっしゃる。奥様はご自分の調合したお香を日本一と思っておいでになったけれど、常陸の国でこんなお香はおつくりになれませんでしたよ。こちらの尼君はお住まいこそ質素だけれど、お着物はとてもご立派でしたよ。尼用の地味な色でも、あんなに美しいなんて」
口々にほめそやしていると、弁の尼の女童が軽いお食事を運んできた。
女房は姫君に声をかけたけれど、起き上がる様子はないので、ふたりだけで食べはじめてしまう。
薫の君は女房のこんな姿をご覧になったことがない。
覗き見たら悪いような気がして、戸からお離れになった。
でもやはり気になって、もう一度近寄ると、ちらちらとご覧になる。
今、女性としてもっとも高い地位にいらっしゃるのは明石の中宮様。
その中宮様をはじめとして、美人な女性や上品な女性を薫の君はたくさん見ていらっしゃった。
そういう女性たちには見向きもなさらなかったのに、どうしてこんな女房たちが気になって、覗き見をおやめになれないのかしら。
ふしぎなお心よね。
でも、動けば気配に気づかれてしまうかもしれない。
我慢してじっとお覗きになる。
「どこからかすばらしい香りがいたしますね。尼君がお香をお焚きになっているのでしょう」
薫の君の香りだなんて夢にも思わず、若い女房がのんきに言う。
「本当にかぐわしい香りだこと。さすが都の人は優雅でいらっしゃる。奥様はご自分の調合したお香を日本一と思っておいでになったけれど、常陸の国でこんなお香はおつくりになれませんでしたよ。こちらの尼君はお住まいこそ質素だけれど、お着物はとてもご立派でしたよ。尼用の地味な色でも、あんなに美しいなんて」
口々にほめそやしていると、弁の尼の女童が軽いお食事を運んできた。
女房は姫君に声をかけたけれど、起き上がる様子はないので、ふたりだけで食べはじめてしまう。
薫の君は女房のこんな姿をご覧になったことがない。
覗き見たら悪いような気がして、戸からお離れになった。
でもやはり気になって、もう一度近寄ると、ちらちらとご覧になる。
今、女性としてもっとも高い地位にいらっしゃるのは明石の中宮様。
その中宮様をはじめとして、美人な女性や上品な女性を薫の君はたくさん見ていらっしゃった。
そういう女性たちには見向きもなさらなかったのに、どうしてこんな女房たちが気になって、覗き見をおやめになれないのかしら。
ふしぎなお心よね。



