「またそんなことを。お参りの前に泊まったときと同じでございますよ。お部屋はぐるりと戸で囲まれているのに、いったいどこから見られることを心配なさるのでしょう」
あきれたように女房が言う。
そっと下りてくる姫君の体はほっそりと上品で、大君によく似ている。
扇をかざしているからお顔は見えない。
薫の君のお胸はどきどきと高鳴る。
乗り物から濡れ縁に下りるときには少し段差がある。
女房ふたりは苦労せず下りたけれど、姫君は時間をかけて下りてお部屋に入った。
紫色のお着物に若草色のお着物を重ねている。
戸のむこうに低めのついたてはあるものの、穴はそれよりも高い位置に開いているから、薫の君にはすべて見えてしまうの。
姫君はその戸が気になるようで、あちら向きに横になった。
女房たちは一息ついて道中の話をしている。
「姫様はお疲れでございましょう。木津川を船で渡るときなんて本当に恐ろしくて。先々月お参りしたときは川の水が少なかったからよかったのですけれど。とはいえ、常陸の国への道中とは比べ物になりませんよ」
こちらはとくに疲れていないようだけれど、姫君は黙りこんでいる。
ふっくらとした腕がいかにも貴族の姫君らしい。
地方長官の娘と思えないほど上品なの。
あきれたように女房が言う。
そっと下りてくる姫君の体はほっそりと上品で、大君によく似ている。
扇をかざしているからお顔は見えない。
薫の君のお胸はどきどきと高鳴る。
乗り物から濡れ縁に下りるときには少し段差がある。
女房ふたりは苦労せず下りたけれど、姫君は時間をかけて下りてお部屋に入った。
紫色のお着物に若草色のお着物を重ねている。
戸のむこうに低めのついたてはあるものの、穴はそれよりも高い位置に開いているから、薫の君にはすべて見えてしまうの。
姫君はその戸が気になるようで、あちら向きに横になった。
女房たちは一息ついて道中の話をしている。
「姫様はお疲れでございましょう。木津川を船で渡るときなんて本当に恐ろしくて。先々月お参りしたときは川の水が少なかったからよかったのですけれど。とはいえ、常陸の国への道中とは比べ物になりませんよ」
こちらはとくに疲れていないようだけれど、姫君は黙りこんでいる。
ふっくらとした腕がいかにも貴族の姫君らしい。
地方長官の娘と思えないほど上品なの。



