野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

翌日の明け方に中君(なかのきみ)は男の子を出産なさった。
(みや)様はとてもおよろこびになる。
(かおる)(きみ)もうれしくお思いになる。
二条(にじょう)(いん)へ参上して、昨夜の宴会(えんかい)にお越しくださったお礼と、ご出産のお祝いを申し上げなさった。
匂宮(におうのみや)様がこちらにずっといらっしゃるから、貴族は誰もかれも二条の院へお祝いに上がる。

ご誕生祝いの宴会も行われる。
三日目はしきたりどおりお身内だけの宴会だったけれど、五日目は薫の君が心をこめてご馳走(ちそう)若君(わかぎみ)のお着物などを手配なさった。
おおげさではないけれど、よく見るとめずらしい工夫がしてある。

七日目は中宮(ちゅうぐう)様が主催(しゅさい)なさって、たくさんの貴族が出席した。
(みかど)も、
「匂宮がはじめて父親になったのだから」
と、若君に()()けの刀をお贈りになった。
九日目は夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様が主催なさった。
(ろく)(きみ)父君(ちちぎみ)としては複雑だけれど、ここで匂宮様に(うら)まれるのは損だもの。
子息(しそく)派遣(はけん)して盛大に行わせなさる。

中君はご懐妊(かいにん)中は体調がお悪く、悩み事も多かったから、華やかに祝われて少しお心が(なぐさ)められた。
薫の君は(さみ)しさもお感じになる。
<もう完璧なお(きさき)様でいらっしゃる。ますます私には手の届かない人になってしまわれた。匂宮様のご愛情も深まるだろう>
(くや)しくはあるけれど、ご後見(こうけん)役としてはうれしくもある。