野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

こうして匂宮(におうのみや)様は三、四日も二条(にじょう)(いん)(こも)っていらっしゃる。
一応、(うらな)いの結果が悪いのでとおっしゃっているけれど、夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様は(うら)めしく思ってお迎えに参上なさった。
内裏(だいり)から六条(ろくじょう)(いん)へお帰りになる途中、ちょっと立ち寄ったようにしてお訪ねなさったけれど、とにかくお(とも)が多い。

「おおげさに何をしにいらっしゃったのだ」
(みや)様はご不快(ふかい)ではあるものの、中君(なかのきみ)のお部屋から離れたところでお会いになった。
「とくに御用(ごよう)もありませんでしたから、ひさしぶりの二条の院でございます。(なつ)かしいことが思い出されます」
しばらく昔話をなさると、大臣様はそのまま宮様を連れて六条の院へご出発なさった。
子息(しそく)や貴族たちの乗り物がぞくぞくと続いて出ていく。

(ろく)(きみ)のご実家の勢力を見せつけられて、
<私など勝負にならないような姫君(ひめぎみ)なのだ>
と中君は絶望(ぜつぼう)なさる。
こっそり(のぞ)いていた女房(にょうぼう)たちはあれこれと言う。
「お美しい大臣様ですね。お若いご子息たちもお美しいけれど、やはり大臣様は別格でいらっしゃる」
「自信たっぷりなご様子でお迎えにいらっしゃったのはひどうございますよ。こちらの奥様に対してこれ見よがしではありませんか。宮様と奥様の仲はどうなってしまわれることか」

中君ご自身も平気ではいらっしゃれない。
<宮様の華やかなご親戚関係のなかに、私などが入ってはいけなかったのだ。後見(こうけん)してくれる父親も親戚もいないというのに。ここで心細い生活をするよりも、宇治に(こも)って静かに暮らした方が世間体(せけんてい)もよいだろう>
宇治へ帰りたいというお気持ちがますます強まるなかで年が暮れていった。