野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

お庭の草花はほとんど()れてしまっているけれど、すすきだけは()がゆらゆらと()(まね)きするように()れている。
まだふんわりとした穂が出ていないものは、(つゆ)がつくと、まるできらきらとした宝石を()したみたい。
毎年の秋の光景だけれど、(もの)(さみ)しい夕風に(さそ)われて(みや)様がおっしゃった。
「穂の出ていないすすきは秘密の恋に苦しんでいるのだろうな。泣いたように露で()れているのだから。あなたも同じなのではありませんか」

上着を()()るだけにしたくつろいだお姿で、琵琶(びわ)をお弾きになっている。
(おだ)やかだけれど悲しい音色が中君(なかのきみ)のお心にもしみる。
いつまでもすねていられなくて、ついたてから少しお顔をお出しになった。
懐妊(かいにん)でやつれて、ますます可憐(かれん)でいらっしゃる。

「宮様のお心こそ、あんなふうに揺れていらっしゃるのでしょう。私に()きてしまわれたのだと分かります。何もかも私の不運のせいでございますけれど」
そうお返事なさったけれど、さすがに気恥ずかしくなって、涙ぐんだお顔を(おうぎ)でお(かく)しになる。
<こういういじらしい人だから、(かおる)(きみ)(あきら)められないのだろう>
中君の長所まで疑いの理由にしてしまわれる。