夜が明けたので都へお帰りになる。
持っていらっしゃった着物の布地などを山寺の阿闍梨にお贈りになった。
弁の尼にもおやりになる。
心細い山荘暮らしだけれど、薫の君の援助のおかげで、身分のわりに優雅に仏教の修行ができているの。
木枯らしが激しく吹いたから、木々から葉がすっかり落ちてしまった。
地面を覆う紅葉は誰にも踏み荒らされていない。
薫の君はそれを見渡して、なかなかご出発する気になれずにいらっしゃる。
老木にからまった蔦の葉だけはまだ残っていた。
「中君へのお土産にしよう」
と、少し取らせなさる。
「寂しいところだな。かつてここに泊まった思い出があるから一晩過ごせたが」
独り言をおっしゃったのが聞こえて、弁の尼がお返事した。
「大君も中君もいらっしゃらなくなった古い山荘ですのに、ここであったことをあなた様は覚えていてくださるのですね」
年老いた女房だけれど、それなりにたしなみ深さがある人よ。
このやりとりで薫の君のお心は少し慰められたみたい。
持っていらっしゃった着物の布地などを山寺の阿闍梨にお贈りになった。
弁の尼にもおやりになる。
心細い山荘暮らしだけれど、薫の君の援助のおかげで、身分のわりに優雅に仏教の修行ができているの。
木枯らしが激しく吹いたから、木々から葉がすっかり落ちてしまった。
地面を覆う紅葉は誰にも踏み荒らされていない。
薫の君はそれを見渡して、なかなかご出発する気になれずにいらっしゃる。
老木にからまった蔦の葉だけはまだ残っていた。
「中君へのお土産にしよう」
と、少し取らせなさる。
「寂しいところだな。かつてここに泊まった思い出があるから一晩過ごせたが」
独り言をおっしゃったのが聞こえて、弁の尼がお返事した。
「大君も中君もいらっしゃらなくなった古い山荘ですのに、ここであったことをあなた様は覚えていてくださるのですね」
年老いた女房だけれど、それなりにたしなみ深さがある人よ。
このやりとりで薫の君のお心は少し慰められたみたい。



