宇治の山荘をしばらくご覧にならないと、薫の君は不安になってしまわれる。
大君のいらした昔が、ますます遠くなるようにお感じになるのね。
八の宮様の三回忌からひと月ほどして、またお越しになった。
秋の終わりの風は激しく、川音も荒々しい。
ひっそりとした山荘をご覧になると、目の前が真っ暗になった。
薫の君は弁の尼をお呼びになる。
地味な色のついたての向こうに出てきて申し上げた。
「お見苦しい尼姿でございますから、失礼ですがここでお話しさせていただきます」
薫の君に姿を見せようとしない。
「そなたも悲しみが癒えないだろう。大君の思い出話をできる人は他にいないと思って、そなたを訪ねてきたのだよ。はかなく月日は経つものだな」
涙をためておっしゃる。
まして年老いた弁の尼が涙をこらえられるはずはない。
「再来月には大君の一周忌でございます。一年前の今ごろは、匂宮様が中君のところへあまり通ってくださらないことを悩んでいらっしゃいました。それが原因でお命を縮めてしまわれたのです。秋の空を見ますと、あのころが思い出されてつろうございます。
都の噂はここにもちらほら聞こえてまいりますよ。宮様は夕霧大臣様の姫君とご結婚なさって、ほとんど六条の院でお暮らしだとか。大君がご心配なさっていたことは、あいかわらずのようでございますね。中君もお気の毒ですが、亡き大君もあの世でどれほどつらくお思いか」
「どこの夫婦も結婚当初はいろいろあるものだが、関係を続けていけばうまい具合に落ち着く。大君はそれをご存じなかったから、目先のことだけを見てお嘆きになっていたのだろう。私がそのあたりのことまで教えてさしあげればよかったと後悔している。
夫が新しい結婚をするということも世間ではよくあることだ。しかし心配する必要はない。宮様は中君を深く愛しておいでだからね。
何があったとしても、生きているうちはよいのだ。はかなく亡くなってしまえばそれまでで、死に別れるというのは本当につらい」
と泣いてしまわれる。
大君のいらした昔が、ますます遠くなるようにお感じになるのね。
八の宮様の三回忌からひと月ほどして、またお越しになった。
秋の終わりの風は激しく、川音も荒々しい。
ひっそりとした山荘をご覧になると、目の前が真っ暗になった。
薫の君は弁の尼をお呼びになる。
地味な色のついたての向こうに出てきて申し上げた。
「お見苦しい尼姿でございますから、失礼ですがここでお話しさせていただきます」
薫の君に姿を見せようとしない。
「そなたも悲しみが癒えないだろう。大君の思い出話をできる人は他にいないと思って、そなたを訪ねてきたのだよ。はかなく月日は経つものだな」
涙をためておっしゃる。
まして年老いた弁の尼が涙をこらえられるはずはない。
「再来月には大君の一周忌でございます。一年前の今ごろは、匂宮様が中君のところへあまり通ってくださらないことを悩んでいらっしゃいました。それが原因でお命を縮めてしまわれたのです。秋の空を見ますと、あのころが思い出されてつろうございます。
都の噂はここにもちらほら聞こえてまいりますよ。宮様は夕霧大臣様の姫君とご結婚なさって、ほとんど六条の院でお暮らしだとか。大君がご心配なさっていたことは、あいかわらずのようでございますね。中君もお気の毒ですが、亡き大君もあの世でどれほどつらくお思いか」
「どこの夫婦も結婚当初はいろいろあるものだが、関係を続けていけばうまい具合に落ち着く。大君はそれをご存じなかったから、目先のことだけを見てお嘆きになっていたのだろう。私がそのあたりのことまで教えてさしあげればよかったと後悔している。
夫が新しい結婚をするということも世間ではよくあることだ。しかし心配する必要はない。宮様は中君を深く愛しておいでだからね。
何があったとしても、生きているうちはよいのだ。はかなく亡くなってしまえばそれまでで、死に別れるというのは本当につらい」
と泣いてしまわれる。



