野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

<私の恋心をさりげなくかわすために言い出しなさったことなのだろう>
異母妹(いぼまい)らしい娘のことを気になさりながらも、中君(なかのきみ)のことは(うら)めしくお思いになる。
<私に言い寄られるなんて絶対にあってはならないことだと思っていらっしゃるようだが、はっきりと拒絶(きょぜつ)はなさらない。私の誠意を分かってくださっているからだろう>
それだけのことでも(かおる)(きみ)は期待してしまわれる。

夜が更けていくので、中君(なかのきみ)人目(ひとめ)を気にしてお部屋の奥へ入ってしまわれた。
<これが当然のお振舞いだ>
と思われるけれど、やはり薫の君はおつらい。
しかしここで泣くわけにもいかず、ただただお心が乱れる。
<無理やり関係を持つなどということはやはり嫌だ。そんなことをしたら自分のためにもならない>
冷静に考え直して、いつも以上に(なげ)きながらご退出なさった。