薫の君は何をお話しになっても、大君のことが思い出されて仕方がない。
「幼いころから出家したいと思っておりました。しかし、あなた様の姉君とお近づきになったことで、その気持ちが変わったのです。お亡くなりになってから、他の女性と親しくなれば悲しみも紛れるだろうかと、あちこちの女性に声をかけてみたのですが、他の人ではまったく駄目でした。
そんなふうにもがいていた私のことを、あなた様は好色だと思っていらっしゃるのでしょう。たしかに褒められたことではなく、お恥ずかしいかぎりですが、あなた様に対してはそのような気持ちは抱いておりません。ただこちらをお訪ねしたときに、気がねなく話し合えるお相手でいていただきたいのです。そのくらいのことなら匂宮様だってお止めになれませんでしょう。私は世間の浮気男とはまったく違います。どなたに聞いていただいても構いません。どうぞご安心くださいませ」
と、恨んだり泣いたりしながら申し上げなさる。
「ご信頼しておりますよ。そうでなければこれほど近くで直接お話などいたしません。長年、いろいろなことであなた様のご厚意に感謝しておりました。特別に頼りにできる方と思って、先日は私から折り入ってご相談をさせていただいたほどです」
「あの程度のご相談を承ったからといって、信頼していただいていると言えますかどうか。さも重大な信頼の証のようにおっしゃいますが、宇治へのお供をお命じくださっただけではありませんか。いえ、そのように申し上げては恐れ多うございますね。私の誠意をお認めくださったからこそのご命令ですから、謹んでお仕えさせていただく所存でございます」
薫の君は皮肉をおっしゃる。
まだお続けになりたいところだけれど、近くに女房もいるのでここまでになさった。
「幼いころから出家したいと思っておりました。しかし、あなた様の姉君とお近づきになったことで、その気持ちが変わったのです。お亡くなりになってから、他の女性と親しくなれば悲しみも紛れるだろうかと、あちこちの女性に声をかけてみたのですが、他の人ではまったく駄目でした。
そんなふうにもがいていた私のことを、あなた様は好色だと思っていらっしゃるのでしょう。たしかに褒められたことではなく、お恥ずかしいかぎりですが、あなた様に対してはそのような気持ちは抱いておりません。ただこちらをお訪ねしたときに、気がねなく話し合えるお相手でいていただきたいのです。そのくらいのことなら匂宮様だってお止めになれませんでしょう。私は世間の浮気男とはまったく違います。どなたに聞いていただいても構いません。どうぞご安心くださいませ」
と、恨んだり泣いたりしながら申し上げなさる。
「ご信頼しておりますよ。そうでなければこれほど近くで直接お話などいたしません。長年、いろいろなことであなた様のご厚意に感謝しておりました。特別に頼りにできる方と思って、先日は私から折り入ってご相談をさせていただいたほどです」
「あの程度のご相談を承ったからといって、信頼していただいていると言えますかどうか。さも重大な信頼の証のようにおっしゃいますが、宇治へのお供をお命じくださっただけではありませんか。いえ、そのように申し上げては恐れ多うございますね。私の誠意をお認めくださったからこそのご命令ですから、謹んでお仕えさせていただく所存でございます」
薫の君は皮肉をおっしゃる。
まだお続けになりたいところだけれど、近くに女房もいるのでここまでになさった。



