野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

(かおる)(きみ)匂宮(におうのみや)様が二条(にじょう)(いん)にいつづけていらっしゃることに、つい嫉妬(しっと)してしまわれる。
<いけない。(おろ)かで常識(はず)れな感情だ。亡くなった大君(おおいぎみ)は、妹の中君(なかのきみ)を最後までご心配なさっていた。大君のかわりに、私が中君のお世話をしてさしあげようと決めたのだ。そのときの真面目な気持ちを忘れてはいけない。

(みや)様は夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様の姫君(ひめぎみ)とご結婚なさっても、中君のことを大切にしてくださっているのだ。後見(こうけん)役として何よりうれしいことではないか。そういえば、二条(にじょう)(いん)(うかが)ったとき、女房(にょうぼう)たちの着物が少し古びているのが気になった>

母君(ははぎみ)尼宮(あまみや)様にお願いして、布地(ぬのじ)や仕立ててある着物をいくつか頂戴(ちょうだい)なさる。
「私ではなく他の男性とご結婚なさったあなた様を、ひたすらお(うら)みしているわけではありません」
というお手紙を添えて、中君の女房()てにお贈りになった。
中君のためのお着物は、目立つようにはしていないけれど、箱に入れて特別に包んである。

年配(ねんぱい)の女房はいつもどおりに受け取った。
中君にはとくにお見せしない。
薫の君が生活面のお世話をしてくださることに慣れきっているのよね。
「とりあえず手元にあったものをいろいろと送ります。()(ぞろ)いですがうまく使ってください」
というご伝言どおりに、てきぱきと他の女房たちに配った。
中君のおそばにお仕えする女房の着物を優先的に仕立てていく。
下働きの人たちにはさっぱりとした白い着物を着せた。