野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

二条(にじょう)(いん)をお出になると、夜のはじめと思っていたのに、とっくに夜明けが近いころだった。
<誰かに見られたら恋人のところから朝帰りしたように思われるだろう。(みょう)(うわさ)が立ったら中君(なかのきみ)がお気の毒だ。
それにしても、ずっとご体調が悪いというのはご懐妊(かいにん)のせいだったのか。腹帯(はらおび)をつけておいでだった。あれではとても無理なことはできない。我ながら真面目すぎるけれど>

ご自分の弱気を馬鹿馬鹿(ばかばか)しく思いながらも、冷静にお考えになる。
<やはり無理()いはしたくない。それに衝動(しょうどう)的に自分のものにしたところで、ふつうの恋人同士にはなれないのだ。こっそり会いにいく私も苦しいが、人妻(ひとづま)の立場で他の男と関係を持てば、中君は悩み乱れてしまわれるだろう>

その一方で、早くも恋しくお思いになる。
<どうしてももう一度お会いしたい。昔よりも少しおやせになって、上品でかわいらしいご様子だった。ずっと中君のことが頭から離れない。宇治(うじ)へ行きたいとおっしゃっていたのを(かな)えてさしあげようか。しかし匂宮(におうのみや)様はお許しにならないだろう。お許しをいただかず勝手にお連れしたら問題になる。世間体(せけんてい)が悪くないやり方で中君を宇治へお連れして、私の恋も叶えられたら最高なのだが。そんな方法はないだろうか>
横になって、夢のようなことをぼんやりと考えていらっしゃる。