野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

翌日はご結婚三日目だから、夜には六条(ろくじょう)(いん)でお祝いの儀式(ぎしき)が開かれる。
午前中に「明石(あかし)中宮(ちゅうぐう)様がご病気」という連絡があって、貴族たちは誰もかれも参内(さんだい)なさったけれど、(さいわ)いちょっとしたお風邪(かぜ)だったみたい。
お昼ごろ、夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様は(かおる)(きみ)とご一緒に内裏(だいり)を退出なさった。
大臣様の乗り物で六条の院へ向かわれる。

今夜の儀式を立派なものにしたいと大臣様は考えていらっしゃる。
できるだけ豪華なご用意をなさった上で、()()えのするお客様がほしいの。
薫の君はうってつけの弟君(おとうとぎみ)よ。
(ろく)(きみ)婿(むこ)になってほしい」という申し入れを断られた相手だから、大臣様は少し気まずい。
でも薫の君が来てくだされば、儀式に華やかな重々しさが加わる。

大臣様に(さそ)われた薫の君は、いつもならゆったりと六条の院にお上がりになるけれど、今日は違うわ。
儀式の主催(しゅさい)(しゃ)である大臣様の弟君として、あれやこれやとご準備に協力なさる。
<六の君が他の男と結婚しても、(くや)しいとも思わないようだ>
大臣様は人知れず(にく)たらしくお思いになる。

すっかり暗くなったころ、匂宮(におうのみや)様はお越しになった。
立派なお料理が並べられ、結婚をお祝いするお(もち)も用意されている。
このあたりはしきたりどおりだから、わざわざ書くまでもないわね。
肝心(かんじん)の宮様は六の君のお部屋から出ていらっしゃらない。
大臣様が女房(にょうぼう)を通じて催促(さいそく)なさって、やっとお出ましになった。

婿君(むこぎみ)として披露(ひろう)される宮様は、とてもご立派でいらっしゃる。
大臣様のご子息(しそく)につづいて、お客様たちがつぎつぎとお酒を差し上げていく。
薫の君が差し上げたときには、宮様は少し苦笑いなさった。
(かた)(くる)しい夕霧大臣の婿になるのは気が進まない」と、薫の君にこぼしたことを思い出されたのでしょうね。
薫の君はそんなことは覚えていないふりで、真面目に婿君のお世話をなさる。

それから離れに行って、宮様のお(とも)()()(もの)をお配りになった。
立派な貴族がたくさん来ている。
身分に応じて女性用の着物を配るのだけれど、決まりがあるから品物を変えることはできない。
色合いや仕立てが特別に豪華にしてあった。
こういう華やかなことは聞いていておもしろいから、物語ならいちいち細かく書くのでしょうね。
でも実際はとても把握(はあく)しきれないほどで、すべて伝えるのは無理だわ。