野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

(みや)様はあえて、いつもよりくつろいだご態度でお過ごしになる。
「お食事を召し上がらないのは絶対にいけません」
とおっしゃって、食べやすそうな果物を用意させたり、特別なお料理を作らせたりなさった。
でも中君(なかのきみ)は見向きもなさらないから、困ってしまわれる。

日が暮れかけたので、ご自分のお部屋へお戻りになった。
今夜はご結婚二日目の夜。
六条(ろくじょう)(いん)(ろく)(きみ)がお待ちになっているから、お出かけの準備をなさらないといけない。

秋らしい風が吹いてきて、空も美しい。
華やかなものが気になってしまうご性格の宮様は、秋の風情(ふぜい)(さそ)われて、お心がいっそうそわそわする。
一方で中君のお心には、苦しいお悩みがたまっていく。
(ひぐらし)が鳴いて夕暮れを知らせる。
中君は宇治(うじ)山荘(さんそう)を恋しく思い出された。
<宇治にいたら蜩の声などどうとも思わないままだったのに。あの声を(うら)めしく聞く日が来るなんて>