匂宮様はこれまでと何も変わらないご様子で、あいかわらず来世のご愛情までお約束なさる。
<この世はあっという間なのだ。寿命を待つほんの短い間にさえ、宮様のつらいお心が見え隠れする。むしろ来世のお約束を頼りにした方がよいかもしれない。あぁ、こうしてまた性懲りもなく宮様を信じてしまう>
我慢しておられたけれど、ついに今日は泣いてしまわれた。
<こんなふうにずっと悲しんでいたのかと思われたくない>
いつもはなんとかお気を紛らわせていらっしゃる。
でもその間に積み重なったいろいろな感情が、ついにあふれてしまった。
一度こぼれはじめると涙は次から次へとあふれて、お止めになることができない。
<恥ずかしい>
中君はお顔をお背けになる。
それを宮様は向き直させて、
「私の言うことを素直に信じてくれる人だと思っていたけれど、そうではなかったのですね。それとも一晩のうちにお心が変わってしまったのだろうか」
と、ご自分のお袖で涙をぬぐっておあげになる。
「まぁ。そんなふうにおっしゃるなんて、宮様こそお心が変わった自覚がおありなのでしょう」
中君は少し微笑んでおっしゃった。
「子どもっぽい言いがかりをおつけになる。完全な見当違いだから、ただかわいらしいなと思って聞いていますがね。男がどれほど言い訳しても、心変わりしたときにははっきりと分かるものですよ。もっとあからさまに態度に出るのです。そういう男女の常識をご存じないところがあなたの魅力でもあるけれど、私としては少し困ってしまう。
ご自分がもし私の立場だったらと考えてごらんなさい。親王などというしがらみの多い立場なのですから、自分の思いどおりには生きられません。もしこの先、私が帝になるようなことがあれば、あなたを誰よりも愛していることを証明する方法があるのだけれど。しかしそれは軽々しく口に出すべきことではない。とにかく長生きして、その日を待っていてください」
上手に中君を慰めていらっしゃるところへ、使者が帰ってきた。
六の君からお返事をお預かりしている。
六条の院でお酒をいただいたみたい。
ひどく酔っていて、中君がいらっしゃるというのに、堂々とお庭に入ってきた。
<この世はあっという間なのだ。寿命を待つほんの短い間にさえ、宮様のつらいお心が見え隠れする。むしろ来世のお約束を頼りにした方がよいかもしれない。あぁ、こうしてまた性懲りもなく宮様を信じてしまう>
我慢しておられたけれど、ついに今日は泣いてしまわれた。
<こんなふうにずっと悲しんでいたのかと思われたくない>
いつもはなんとかお気を紛らわせていらっしゃる。
でもその間に積み重なったいろいろな感情が、ついにあふれてしまった。
一度こぼれはじめると涙は次から次へとあふれて、お止めになることができない。
<恥ずかしい>
中君はお顔をお背けになる。
それを宮様は向き直させて、
「私の言うことを素直に信じてくれる人だと思っていたけれど、そうではなかったのですね。それとも一晩のうちにお心が変わってしまったのだろうか」
と、ご自分のお袖で涙をぬぐっておあげになる。
「まぁ。そんなふうにおっしゃるなんて、宮様こそお心が変わった自覚がおありなのでしょう」
中君は少し微笑んでおっしゃった。
「子どもっぽい言いがかりをおつけになる。完全な見当違いだから、ただかわいらしいなと思って聞いていますがね。男がどれほど言い訳しても、心変わりしたときにははっきりと分かるものですよ。もっとあからさまに態度に出るのです。そういう男女の常識をご存じないところがあなたの魅力でもあるけれど、私としては少し困ってしまう。
ご自分がもし私の立場だったらと考えてごらんなさい。親王などというしがらみの多い立場なのですから、自分の思いどおりには生きられません。もしこの先、私が帝になるようなことがあれば、あなたを誰よりも愛していることを証明する方法があるのだけれど。しかしそれは軽々しく口に出すべきことではない。とにかく長生きして、その日を待っていてください」
上手に中君を慰めていらっしゃるところへ、使者が帰ってきた。
六の君からお返事をお預かりしている。
六条の院でお酒をいただいたみたい。
ひどく酔っていて、中君がいらっしゃるというのに、堂々とお庭に入ってきた。



