野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

寝起きの美しいお姿で、中君(なかのきみ)のお部屋へお入りになる。
横になったままなのもよくないだろうと中君が起き上がりなさると、赤らんだお顔が今朝は格別におかわいらしい。
(みや)様はおもわず涙ぐまれて、じっとご覧になる。
恥ずかしくてうつ()してしまわれた中君のお(ぐし)が、また最高にお美しく見える。

気まずくて(ろく)(きみ)とのご結婚のお話はなさらない。
あえて他の話題をお出しになる。
「どうしていつまでもお具合がよくならないのだろう。暑いからとおっしゃったから涼しくなるのを待っていたけれど、まだよくおなりにならないから困ってしまう。ご病気回復のお祈りは効果が出ませんね。それでも続けさせた方がよいだろうな。他に有名な僧侶(そうりょ)は誰がいるだろう。あぁ、あの僧侶に頼めばよかった」
などと真面目ぶっておっしゃる。

どんなことでもいかにも愛情深くお話しになるのよね。
(にく)らしいけれど、お返事しなければ「いつもと態度が違う」と宮様に思われてしまう。
「私は人とは違う体質のようで、昔からお祈りなどしなくても自然と病気が治るのです。ご心配いただくまでもなく、今回もすぐに治りましょう」
「ずいぶんあっけらかんとおっしゃるのだから」
宮様はお笑いになる。

<優しく愛嬌(あいきょう)があるという点では、この中君に並ぶ人はいないだろう>
と思う一方で、早く夜になって六の君に会いたいともお思いになる。
やはり新しい奥様を相当気に入られたのね。