野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

いよいよ匂宮(におうのみや)様と(ろく)(きみ)がご結婚なさる日、夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様は六条(ろくじょう)(いん)を飾りたててご用意なさっていた。
かつて花散里(はなちるさと)(きみ)がお住まいだった夏の御殿(ごてん)は、今は大臣様の奥様がお暮らしになっている。
六の君はこの皇族出身の奥様のご養女(ようじょ)になって、大臣様の姫君(ひめぎみ)たちのなかでもとくに大切にされていらっしゃるの。

ところが、夜遅くになってもなかなか匂宮様がお越しにならない。
大臣様は内裏(だいり)使者(ししゃ)を出された。
戻ってきた使者は、
「夕方に内裏からご退出なさって、今は二条(にじょう)(いん)にいらっしゃるようです」
と申し上げる。

中君(なかのきみ)のところへお寄りになったのか>
大臣様はご不快(ふかい)だけれど、今夜ご結婚なさることは世間(せけん)(じゅう)が知っている。
万が一お越しくださらなければ笑い者になってしまうわ。
今度はご子息(しそく)を使者にして、二条の院の(みや)様のところへお手紙を届けさせなさった。
「遅く出る今夜の月さえ姿を現しましたのに、まだお越しくださらないのですね」