中君が大君にそっくりだとお思いになるたびに、薫の君は後悔なさる。
<大君が私と中君の結婚を望まれたときは、まったくそんな気になれなかった。それでためらいもせず中君を宮様にお譲りしたのだ>
中君のことが頭から離れないので、
<あぁ、なんという面倒な心だ。自業自得ではないか>
と、思いを断ち切ろうとなさる。
大君がお亡くなりになってから、お屋敷ではずっとお経を読んでいらっしゃる。
母君の尼宮様は心配になってしまわれた。
この母宮様はいつまでも少女のような方で、普段は周りのことなど気にせずぼんやりなさっている。
それでも、薫の君があまりに仏教の修行にのめりこんでいかれるから、さすがに嫌な予感がしてお尋ねになった。
「まさか出家なさるおつもりですか。もう私は先が長くないのですから、生きている間はどうかふつうのお姿でいてください。尼の私が出家をお止めしてはいけないけれど、あなたに出家されたら、私は言葉も出ないほど悲しむでしょう。おろおろと嘆いて、今以上に罪深い身になってしまうのが恐ろしいのです」
薫の君は母宮様にご心配をおかけしたことを申し訳なくお思いになる。
それから母宮様の前では、悩み事を頭から追い払って、朗らかなふりをなさるようになった。
<大君が私と中君の結婚を望まれたときは、まったくそんな気になれなかった。それでためらいもせず中君を宮様にお譲りしたのだ>
中君のことが頭から離れないので、
<あぁ、なんという面倒な心だ。自業自得ではないか>
と、思いを断ち切ろうとなさる。
大君がお亡くなりになってから、お屋敷ではずっとお経を読んでいらっしゃる。
母君の尼宮様は心配になってしまわれた。
この母宮様はいつまでも少女のような方で、普段は周りのことなど気にせずぼんやりなさっている。
それでも、薫の君があまりに仏教の修行にのめりこんでいかれるから、さすがに嫌な予感がしてお尋ねになった。
「まさか出家なさるおつもりですか。もう私は先が長くないのですから、生きている間はどうかふつうのお姿でいてください。尼の私が出家をお止めしてはいけないけれど、あなたに出家されたら、私は言葉も出ないほど悲しむでしょう。おろおろと嘆いて、今以上に罪深い身になってしまうのが恐ろしいのです」
薫の君は母宮様にご心配をおかけしたことを申し訳なくお思いになる。
それから母宮様の前では、悩み事を頭から追い払って、朗らかなふりをなさるようになった。



