もともと強引なところのない薫の君が、さらに落ち着いた口調でお話しになる。
直接お話しすることに抵抗が薄くなって、中君は少しずつお声をお聞かせなさる。
「お具合がよろしくないと伺いましたが、いかがでございますか」
というご質問にははっきりとお答えなさらなかったけれど。
いつもより中君が沈んだご様子なのを、
<匂宮様が六の君とご結婚なさるからだろう>
とお気の毒にお思いになる。
奥様としてのお心構えを、まるで実のご兄妹のように優しく教えておあげになった。
ときどき聞こえる中君のお声は、はっとするほど大君にそっくり。
これまではあまり似ていないと思っていらっしゃったのに。
間にある簾を人目も気にせず上げたくなってしまわれる。
<お具合が悪いというお姿さえ拝見したい。あぁ、やはりこれは恋だ。人は恋の苦しみから逃れられない生き物なのだ>
出家したいと強く願っていた自分さえそうなのだと、思い知ってしまわれた。
中君にさりげなくお伝えになる。
「たいして華やかな人生にはならなくても、落ち着いて自分の道を歩んでいけばよい、そのくらいのことはできるだろうと思っておりました。それが大君に恋をしてしまったばかりに、死別という悲しい目に遭い、今はまたあなた様について後悔していることがあるのです。我ながらどうしようもないことでうじうじと心を悩ませています。
悩むといっても、世間の貴族たちが出世のことで悩んでいるのは、ごく当たり前と言えるのです。生活に直結する問題なのですから。私の悩みなどそれに比べたらつまらないことで、そんなことのためにこれほど苦しむのは、罪深い行為なのでしょうね」
ご自分のお屋敷のお庭で折っていらした朝顔を、じっとご覧になる。
扇の上でぐったりして、だんだん赤みがかっていくのがかえって美しい。
扇ごと簾のむこうへ差し出して、
「あなた様のことを大君は私に託そうとなさいましたが、愚かにもお断りしてしまいました」
とおっしゃる。
「露をつけたままそっとお持ちくださいましたのに、花はみるみる元気がなくなっていきますね。このまま露を残して枯れてしまうのでしょう。姉君のように儚い花ですけれど、残された露や私はもっと儚い運命でございます。何を頼りに生きていったらよいか分かりません」
とぎれとぎれに奥ゆかしくお返事なさる。
<やはりよく似ておいでだ>
薫の君は悲しくなりながら、宇治のお話をなさる。
直接お話しすることに抵抗が薄くなって、中君は少しずつお声をお聞かせなさる。
「お具合がよろしくないと伺いましたが、いかがでございますか」
というご質問にははっきりとお答えなさらなかったけれど。
いつもより中君が沈んだご様子なのを、
<匂宮様が六の君とご結婚なさるからだろう>
とお気の毒にお思いになる。
奥様としてのお心構えを、まるで実のご兄妹のように優しく教えておあげになった。
ときどき聞こえる中君のお声は、はっとするほど大君にそっくり。
これまではあまり似ていないと思っていらっしゃったのに。
間にある簾を人目も気にせず上げたくなってしまわれる。
<お具合が悪いというお姿さえ拝見したい。あぁ、やはりこれは恋だ。人は恋の苦しみから逃れられない生き物なのだ>
出家したいと強く願っていた自分さえそうなのだと、思い知ってしまわれた。
中君にさりげなくお伝えになる。
「たいして華やかな人生にはならなくても、落ち着いて自分の道を歩んでいけばよい、そのくらいのことはできるだろうと思っておりました。それが大君に恋をしてしまったばかりに、死別という悲しい目に遭い、今はまたあなた様について後悔していることがあるのです。我ながらどうしようもないことでうじうじと心を悩ませています。
悩むといっても、世間の貴族たちが出世のことで悩んでいるのは、ごく当たり前と言えるのです。生活に直結する問題なのですから。私の悩みなどそれに比べたらつまらないことで、そんなことのためにこれほど苦しむのは、罪深い行為なのでしょうね」
ご自分のお屋敷のお庭で折っていらした朝顔を、じっとご覧になる。
扇の上でぐったりして、だんだん赤みがかっていくのがかえって美しい。
扇ごと簾のむこうへ差し出して、
「あなた様のことを大君は私に託そうとなさいましたが、愚かにもお断りしてしまいました」
とおっしゃる。
「露をつけたままそっとお持ちくださいましたのに、花はみるみる元気がなくなっていきますね。このまま露を残して枯れてしまうのでしょう。姉君のように儚い花ですけれど、残された露や私はもっと儚い運命でございます。何を頼りに生きていったらよいか分かりません」
とぎれとぎれに奥ゆかしくお返事なさる。
<やはりよく似ておいでだ>
薫の君は悲しくなりながら、宇治のお話をなさる。



