夜が明けていくにつれて風情ある霧が立ちこめる。
ご近所の二条の院へはすぐ到着なさったけれど、乗り物のなかで薫の君はふとお気づきになった。
<匂宮様が内裏にお泊まりになったのなら、今朝は中君も女房たちものんびり朝寝坊なさっているだろう。まだ窓も開けていないのではないか。戸締りしてあるところに声をかけるのも気が引ける。伺うのが早すぎたな>
一応お屋敷のご様子を見てくるようにお供にお命じになる。
お供は開いている門からなかを覗くと、
「窓は開いておりまして、女房たちも働いているようでございます」
とご報告した。
それならばと薫の君は乗り物からお降りになる。
霧に紛れてお庭へ入っていかれると、女房たちは人の気配に気づいた。
宮様のお帰りだろうかと思ったけれど、すばらしくよい香りが漂ってくる。
朝露でぬれたお着物から、いつも以上に濃い香りが立っているのね。
「あの香りは薫の君だわ。やはり格別な方でいらっしゃる。落ち着きはらっておられるのが憎いけれど」
若い女房たちは色めきだっても、来客にあわてる様子は見せない。
さりげなく優雅に動いて、簾の奥から薫の君に敷物をお出しした。
「濡れ縁に座らせていただけるだけでも満足しなければいけないのでしょうが、やはりここでは放り出されたようで気恥ずかしくなってしまいます。こういうお扱いを受けますから、なかなかお伺いしようと思えずご無沙汰しております」
縁側までお入れするべきだと、匂宮様も以前おっしゃっていたものね。
でも中君は、宮様から妙な嫉妬をされるのは避けたい。
それであいかわらず濡れ縁に客席をご用意させなさったの。
「濡れ縁でなければ、どこをお望みでございますか」
女房は薫の君にお尋ねした。
「北側のお部屋へ入れていただけませんか。あなたたち女房が控えているところです。中君が私をお身内扱いしてくださるなら、そのくらいお許しになってもよいはずだ。しかしまぁ、ここに席があるということは、そういうことなのでしょうね。そこまでの信頼はしていただいていないようだから、文句を申し上げるべきではないだろう」
優雅なお姿でご不満を漏らされるから、女房たちは味方をしてしまう。
「客席を濡れ縁のままになさるのでしたら、せめて奥様が縁側までお出になって、簾越しに直接お話しなされませ」
と中君にお勧めするの。
ご近所の二条の院へはすぐ到着なさったけれど、乗り物のなかで薫の君はふとお気づきになった。
<匂宮様が内裏にお泊まりになったのなら、今朝は中君も女房たちものんびり朝寝坊なさっているだろう。まだ窓も開けていないのではないか。戸締りしてあるところに声をかけるのも気が引ける。伺うのが早すぎたな>
一応お屋敷のご様子を見てくるようにお供にお命じになる。
お供は開いている門からなかを覗くと、
「窓は開いておりまして、女房たちも働いているようでございます」
とご報告した。
それならばと薫の君は乗り物からお降りになる。
霧に紛れてお庭へ入っていかれると、女房たちは人の気配に気づいた。
宮様のお帰りだろうかと思ったけれど、すばらしくよい香りが漂ってくる。
朝露でぬれたお着物から、いつも以上に濃い香りが立っているのね。
「あの香りは薫の君だわ。やはり格別な方でいらっしゃる。落ち着きはらっておられるのが憎いけれど」
若い女房たちは色めきだっても、来客にあわてる様子は見せない。
さりげなく優雅に動いて、簾の奥から薫の君に敷物をお出しした。
「濡れ縁に座らせていただけるだけでも満足しなければいけないのでしょうが、やはりここでは放り出されたようで気恥ずかしくなってしまいます。こういうお扱いを受けますから、なかなかお伺いしようと思えずご無沙汰しております」
縁側までお入れするべきだと、匂宮様も以前おっしゃっていたものね。
でも中君は、宮様から妙な嫉妬をされるのは避けたい。
それであいかわらず濡れ縁に客席をご用意させなさったの。
「濡れ縁でなければ、どこをお望みでございますか」
女房は薫の君にお尋ねした。
「北側のお部屋へ入れていただけませんか。あなたたち女房が控えているところです。中君が私をお身内扱いしてくださるなら、そのくらいお許しになってもよいはずだ。しかしまぁ、ここに席があるということは、そういうことなのでしょうね。そこまでの信頼はしていただいていないようだから、文句を申し上げるべきではないだろう」
優雅なお姿でご不満を漏らされるから、女房たちは味方をしてしまう。
「客席を濡れ縁のままになさるのでしたら、せめて奥様が縁側までお出になって、簾越しに直接お話しなされませ」
と中君にお勧めするの。



