野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

家来(けらい)をお呼びになって、
二条(にじょう)(いん)へ参るから目立たない乗り物を用意せよ」
とお命じになった。
匂宮(におうのみや)様は昨日から内裏(だいり)においでのようでございますが」
家来がお返事すると、
「それでもよい。近ごろ中君(なかのきみ)がご体調を(くず)されているらしい。お見舞いを申し上げようと思うのだ。私も今日は参内(さんだい)しなければならないから、日が高くなる前に(うかが)いたい」
と言ってお着替えをなさる。

乗り物にお乗りになる前に、お庭の花の方へ近づかれる。
花のなかにたたずむ(かおる)(きみ)は、とくに着飾っていらっしゃるわけではないけれど、上品でご立派な雰囲気がおありよ。
おしゃれに必死になっている男たちとは格が違う。
自然と美しく見えてしまうの。

やっと開いた朝顔を引き寄せなさると、(つゆ)がひどくこぼれた。
「ほんの短い時間だが()でよう。露が消えてしまうころにはしおれてしまうと分かっているけれど」
(ひと)(ごと)をおっしゃると一枝(ひとえだ)お折りになった。
美しい女房(にょうぼう)たちの方は、もうちらりともご覧にならない。