野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

お屋敷には美しい女房(にょうぼう)たちがたくさんお仕えしている。
なかには宇治(うじ)姫君(ひめぎみ)たちに(おと)らないような身分の人も混ざっているのよ。
(わけ)あって落ちぶれてしまった人たちを、(かおる)(きみ)は探し集めて女房にしていらっしゃる。
それなりにかわいがってみても、本気でお愛しになることはない。
出家(しゅっけ)(さまた)げになるといけないもの。

それほどご出家への思いが強かったはずなのに、大君(おおいぎみ)に恋をして、失って、今度は人妻(ひとづま)になった中君(なかのきみ)を恋しく思っていらっしゃる。
<どうしようもない男だな>
ご自分のお心が手に(あま)って、一睡(いっすい)もできないまま朝になってしまった。

お庭には(きり)(ただよ)っている。
垣根(かきね)にいろいろな花が美しく咲いているなかで、(はかな)げな朝顔に目をお()めになった。
<ほんの短い時間しか咲かない花だ。儚くお亡くなりになった大君に似ている>
朝顔の花が開いていくところを、おひとりでじっと見つめていらっしゃる。