野いちご源氏物語 四九 宿木(やどりき)

匂宮(におうのみや)様はいつも以上に優しくなさる。
寝ても覚めてもご将来を約束なさって、この世だけでなく来世(らいせ)までの愛をお(ちか)いになる。
というのも、五月ころから中君(なかのきみ)はご体調を(くず)されている。
ひどく苦しがることはなさらないけれど、食欲がなく、横になられてばかり。
そう、ご懐妊(かいにん)よ。

(みや)様は妊娠(にんしん)した人をあまりご覧になったことがないから、
<暑さのせいだろう>
なんて思っていらっしゃる。
それでもさすがに(あや)しまれて、
「どうしたというのです。妊娠した人はそんなふうになるらしいけれど」
とお尋ねになる。

中君は恥ずかしくてごまかしてしまわれる。
差し出がましくお伝えする女房(にょうぼう)などもいないから、宮様はよく分からないままでいらっしゃる。