野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

(かおる)(きみ)はこの機会に出家(しゅっけ)しようとお思いになる。
でも、母宮(ははみや)様がお悲しみになるだろうし、ご自分が出家なさったら中君(なかのきみ)のお世話をする人がいなくなってしまう。
<中君と結婚してほしいと大君(おおいぎみ)に言われたときには、いくらご姉妹でも心を移すことなどできないとお断りしたのだった。しかし、匂宮(におうのみや)様にほとんど捨てられてしまわれた今の中君を思えば、そうしておいた方がよかったのかもしれない。大君の思い出話ができる相手として、お互いに(なぐさ)めあえたのではないか>

今さらどうにもならないことをお考えになっていて、都に少し戻ろうともなさらない。
すっかり沈みこんで宇治(うじ)(こも)っていらっしゃるのを、<よほど深いご愛情だったのだろう>と世間は見ている。
(みかど)をはじめとしてお見舞いがたくさん届く。

ぼんやりなさっているだけでも日は過ぎていく。
七日ごとのご法要(ほうよう)を念入りに(もよお)されるけれど、ご夫婦ではなかったから、薫の君は喪服(もふく)をお召しになれない。
女房(にょうぼう)たちが黒い喪服を着ているのをうらやましくご覧になる。

「血の涙を流して悲しんでいても喪服は着られないのか」
皮肉(ひにく)なほどきれいな色合いのお着物をお召しになっている。
(そで)を涙でひどく()らして物思いをなさっているご様子は、とても上品でお美しい。
女房たちはこっそり(のぞ)いて、
「大君はもう戻っていらっしゃいませんけれど、薫の君までお越しにならなくなると思うと残念です。ご姉妹そろってうまくいかない運命でいらっしゃいましたね。これほど婿君にふさわしい方と、どちらもお幸せになれなかったなんて」
と泣きあっている。