<こんなにあっけなくお亡くなりになるはずがない。夢ではないか>
薫の君は灯りを近くに寄せて大君をご覧になる。
お顔はお美しいままで、ただ寝ていらっしゃるだけのようなの。
<蝉の抜け殻のようにこのままとっておきたい>
なんて思ってしまわれるほど、薫の君はふつうではなくなっていらっしゃる。
女房たちがご葬儀の支度を始める。
お髪を整えてさしあげると、ふわりとよい香りが漂った。
お元気だったころと同じ香りに薫の君のお胸は締めつけられる。
<これほど完璧な人を忘れることなどできない。仏様が『この世に執着するな。出家してしまえ』とおっしゃっているのだろうか。もしそうならば、仏様、この人のおそろしくゆがんだお顔を見せてくださいませ。この人への愛情が冷めるような何かを見せてくださいませ>
仏様に念じなさっても何も変わらない。
むしろおつらくなるばかり。
<お姿があるからいけないのだ。早く煙にしてしまった方がよい>
と決めて、火葬のご準備を急がれる。
皮肉なご愛情よね。
火葬場へ行かれても足取りはふらふらとおぼつかない。
<煙はたったあれだけか。亡骸と同じように儚げな煙だ>
悲しみながら山荘へお帰りになる。
薫の君は灯りを近くに寄せて大君をご覧になる。
お顔はお美しいままで、ただ寝ていらっしゃるだけのようなの。
<蝉の抜け殻のようにこのままとっておきたい>
なんて思ってしまわれるほど、薫の君はふつうではなくなっていらっしゃる。
女房たちがご葬儀の支度を始める。
お髪を整えてさしあげると、ふわりとよい香りが漂った。
お元気だったころと同じ香りに薫の君のお胸は締めつけられる。
<これほど完璧な人を忘れることなどできない。仏様が『この世に執着するな。出家してしまえ』とおっしゃっているのだろうか。もしそうならば、仏様、この人のおそろしくゆがんだお顔を見せてくださいませ。この人への愛情が冷めるような何かを見せてくださいませ>
仏様に念じなさっても何も変わらない。
むしろおつらくなるばかり。
<お姿があるからいけないのだ。早く煙にしてしまった方がよい>
と決めて、火葬のご準備を急がれる。
皮肉なご愛情よね。
火葬場へ行かれても足取りはふらふらとおぼつかない。
<煙はたったあれだけか。亡骸と同じように儚げな煙だ>
悲しみながら山荘へお帰りになる。



