野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

「よく見よ、この世などつまらないところだろう。さっさと出家(しゅっけ)するがよい」
仏様が(かおる)(きみ)にそうお(すす)めなさっているのか、薫の君の目の前で大君(おおいぎみ)はすうっと息をひきとられた。
もちろん引きとめることなどおできにならない。
女房(にょうぼう)たちが見ていることも忘れてうろたえなさる。

中君(なかのきみ)も<私も姉君(あねぎみ)と死にたい>と動揺(どうよう)なさる。
正気(しょうき)を失ったご様子で亡骸(なきがら)にすがりついていらっしゃるのを、(ろう)女房(にょうぼう)たちは、
縁起(えんぎ)が悪うございます」
と言ってお引き離しする。