野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

(かおる)(きみ)大君(おおいぎみ)の隣で横になられた。
仏様との間にはついたてをお立てになったけれど、仏様のためのお(こう)や、お(そな)えした植物の香りはさえぎれない。
仏教を真面目に勉強なさっている薫の君は気まずくていらっしゃる。
<もうすぐ()が明けるというのに、ここで我慢(がまん)ができなくなったかのように関係を持つのは軽率(けいそつ)だろう。やはり初めの考えどおり喪が明けるのをお待ちしよう。さすがにそのころには、大君のお心も多少ゆるむだろうから>
と、無理にお心を静めなさる。

秋の夜はどこでも物寂しいものだけれど、宇治(うじ)はとくに寂しくて、山からの風も虫の()も心細く聞こえる。
薫の君がこの世の(はかな)さをぽつりぽつりと話されると、大君はときどきお返事をなさる。
そのご様子が理想どおりでいらっしゃる。

大君はただただお悲しい。
父宮(ちちみや)様が心配なさっていたのはこういうことだったのか。ご自分の死後、私たち姉妹がどうなるかと(なげ)いていらっしゃったけれど、両親に先立たれてしまうとこんな心外(しんがい)な目に()うのだ>
川音と一緒に涙が流れ落ちるような気がなさる。