阿闍梨はそれだけ言うと席を離れた。
八の宮様のご成仏のために、阿闍梨は僧侶たちをあちこちに行かせ、お経を唱えさせている。
その僧侶たちが、ちょうどこの山荘に回ってきた。
お経の声がご病室まで聞こえてくる。
仏教におくわしい薫の君は、ありがたいことだとお思いになる。
そこへ中君が戻っていらっしゃる気配がした。
薫の君は居ずまいを正しておっしゃる。
「あのお経は、八の宮様のために阿闍梨が特別に手配したようです。頼もしい声ですね。ご成仏をお祈りする正式な儀式ではないけれど、尊いことに思えます。あぁ、千鳥の声も聞こえる。寒くて寂しいのでしょう」
静かなお声が匂宮様に似ているような気がなさる。
つい直接お返事なさりそうになったれど、よその男性にお声を聞かせるわけにはいかない。
弁の君を通じておっしゃった。
「千鳥は悲しみ悩む私の気持ちを知って、共感してくれているのでしょうか」
中君とは似ても似つかない老女房ではあるものの、それなりに品よくお伝えする。
<大君とこういうちょっとしたやりとりをするとき、あの人の奥ゆかしさとお優しさが感じられたものだった。亡くなってしまわれたらもうそんなやりとりもできないのか>
薫の君は茫然となさる。
八の宮様のご成仏のために、阿闍梨は僧侶たちをあちこちに行かせ、お経を唱えさせている。
その僧侶たちが、ちょうどこの山荘に回ってきた。
お経の声がご病室まで聞こえてくる。
仏教におくわしい薫の君は、ありがたいことだとお思いになる。
そこへ中君が戻っていらっしゃる気配がした。
薫の君は居ずまいを正しておっしゃる。
「あのお経は、八の宮様のために阿闍梨が特別に手配したようです。頼もしい声ですね。ご成仏をお祈りする正式な儀式ではないけれど、尊いことに思えます。あぁ、千鳥の声も聞こえる。寒くて寂しいのでしょう」
静かなお声が匂宮様に似ているような気がなさる。
つい直接お返事なさりそうになったれど、よその男性にお声を聞かせるわけにはいかない。
弁の君を通じておっしゃった。
「千鳥は悲しみ悩む私の気持ちを知って、共感してくれているのでしょうか」
中君とは似ても似つかない老女房ではあるものの、それなりに品よくお伝えする。
<大君とこういうちょっとしたやりとりをするとき、あの人の奥ゆかしさとお優しさが感じられたものだった。亡くなってしまわれたらもうそんなやりとりもできないのか>
薫の君は茫然となさる。



