日が暮れたので、女房は薫の君にお食事をお出ししようとする。
「いつものお客席で」
とお願いするけれど、薫の君はそれよりも大君のおそばに行かれたい。
女房は薫の君をご病室へお入れした。
ついたてをはさんだところにお座りになる。
看病している中君はお困りになったけれど、女房たちは薫の君と大君をご夫婦だと思い込んでいるから仕方がない。
灯りは遠いところに置いてある。
暗いご病室のなかで、薫の君はついたてを少しずらして奥をお覗きになった。
二、三人の老女房が付き添っている。
中君は少し奥へ隠れてしまわれたみたい。
人が少なくていかにも心細いご病室なの。
「どうしてお声だけでも聞かせてくださらないのですか」
薫の君が大君のお手をとっておっしゃった。
大君はか細いお声で、
「意識はあるのですが、声を出すのが苦しくて。しばらくお越しになりませんでしたから、お会いできないまま死ぬのかと悲しゅうございました」
とおっしゃる。
「そんなにお待ちくださっていたとは。もっと早くお訪ねするべきでした」
声を上げて薫の君はお泣きになる。
お顔にそっと触れてごらんになるとお熱がある。
「何の罰が当たったのでしょうね。私にご冷淡になさったことだろうか」
あれこれと耳元でささやかれるから、大君は恥ずかしくてお顔を袖で覆われた。
今にも消えてしまいそうな弱々しいお姿に、薫の君は最悪の想像をしてぞわりとなさる。
「ずっとご看病なさっていてお疲れでしょう。今夜は安心してお休みください。私がお付きしておりますから」
と中君におっしゃった。
ご心配ではあったけれど、何かお考えがあるのかもしれないと中君は奥のお部屋へお移りになる。
薫の君はさりげなく大君のお顔をご覧になる。
恥ずかしく思われるけれど、もう運命だとあきらめておられる。
<私を熱心にお口説きになりながらも、匂宮様に比べたらゆったりとして安心できる方でいらっしゃった>
めずらしい男性だとお気づきになっている。
<死んだあと、強情な女として薫の君の記憶に残りたくない>
大君はもう、枕もとにぴったりと寄り添う薫の君を遠ざけることはなさらない。
薫の君は一晩中お薬湯を飲ませようとなさる。
でもまったくお飲みにならないから、
<どうやってお命をつなぎとめたらよいだろうか>
とお悩みになる。
「いつものお客席で」
とお願いするけれど、薫の君はそれよりも大君のおそばに行かれたい。
女房は薫の君をご病室へお入れした。
ついたてをはさんだところにお座りになる。
看病している中君はお困りになったけれど、女房たちは薫の君と大君をご夫婦だと思い込んでいるから仕方がない。
灯りは遠いところに置いてある。
暗いご病室のなかで、薫の君はついたてを少しずらして奥をお覗きになった。
二、三人の老女房が付き添っている。
中君は少し奥へ隠れてしまわれたみたい。
人が少なくていかにも心細いご病室なの。
「どうしてお声だけでも聞かせてくださらないのですか」
薫の君が大君のお手をとっておっしゃった。
大君はか細いお声で、
「意識はあるのですが、声を出すのが苦しくて。しばらくお越しになりませんでしたから、お会いできないまま死ぬのかと悲しゅうございました」
とおっしゃる。
「そんなにお待ちくださっていたとは。もっと早くお訪ねするべきでした」
声を上げて薫の君はお泣きになる。
お顔にそっと触れてごらんになるとお熱がある。
「何の罰が当たったのでしょうね。私にご冷淡になさったことだろうか」
あれこれと耳元でささやかれるから、大君は恥ずかしくてお顔を袖で覆われた。
今にも消えてしまいそうな弱々しいお姿に、薫の君は最悪の想像をしてぞわりとなさる。
「ずっとご看病なさっていてお疲れでしょう。今夜は安心してお休みください。私がお付きしておりますから」
と中君におっしゃった。
ご心配ではあったけれど、何かお考えがあるのかもしれないと中君は奥のお部屋へお移りになる。
薫の君はさりげなく大君のお顔をご覧になる。
恥ずかしく思われるけれど、もう運命だとあきらめておられる。
<私を熱心にお口説きになりながらも、匂宮様に比べたらゆったりとして安心できる方でいらっしゃった>
めずらしい男性だとお気づきになっている。
<死んだあと、強情な女として薫の君の記憶に残りたくない>
大君はもう、枕もとにぴったりと寄り添う薫の君を遠ざけることはなさらない。
薫の君は一晩中お薬湯を飲ませようとなさる。
でもまったくお飲みにならないから、
<どうやってお命をつなぎとめたらよいだろうか>
とお悩みになる。



