薫の君が山荘にお着きになると、お祈りをしているはずの僧侶たちがいない。
「ご病気から完全に回復なさるまでお祈りを続けよ」
と薫の君はお命じになっていたのに、大君がもう大丈夫だからと帰してしまわれたみたい。
お屋敷のなかは人気が少なくなっていて、弁の君が出てきてご病状をお話しする。
「どこが痛いというわけでもなく、それほどひどいご病状でもないのですが、お食事をまったく召し上がらないのです。もともとか弱い方でしたのに、中君のご結婚のことでお悩みになり、ちょっとした果物さえ見るのも嫌だとおっしゃることが続きまして。それですっかり弱ってしまわれ、もうご回復の見込みはないように拝見いたします。長生きをしたせいでこんなにつらい目に遭うだなんて。どうにか私の方が先に死んでしまいたいと存じます」
言い終えることもできずに泣いている。
「どうしてもっと早く教えてくれなかったのだ。内裏でも上皇様のところでも行事の多い時期で、何日もお見舞いの使者を出していなかったのが迂闊だった」
後悔なさりながらご病室にお入りになる。
枕もとでお声をおかけになるけれど、大君はもうお話しになれないようでお返事がない。
「これほどの重態におなりだったのか。誰も知らせてくれなかったのがつらい。私の気持ちを知らないわけではないだろう」
女房たちをお恨みになる。
山寺の阿闍梨や、病気回復のお祈りで有名な僧侶をたくさんお呼びになった。
すぐにお祈りを始めさせるとのことで、薫の君の家来たちも手伝いのために都からやって来る。
いろいろな人がばたばたと支度をする。
先ほどまでの心細い雰囲気とはがらりと変わって、山荘のなかは頼もしい騒がしさで満ちていく。
「ご病気から完全に回復なさるまでお祈りを続けよ」
と薫の君はお命じになっていたのに、大君がもう大丈夫だからと帰してしまわれたみたい。
お屋敷のなかは人気が少なくなっていて、弁の君が出てきてご病状をお話しする。
「どこが痛いというわけでもなく、それほどひどいご病状でもないのですが、お食事をまったく召し上がらないのです。もともとか弱い方でしたのに、中君のご結婚のことでお悩みになり、ちょっとした果物さえ見るのも嫌だとおっしゃることが続きまして。それですっかり弱ってしまわれ、もうご回復の見込みはないように拝見いたします。長生きをしたせいでこんなにつらい目に遭うだなんて。どうにか私の方が先に死んでしまいたいと存じます」
言い終えることもできずに泣いている。
「どうしてもっと早く教えてくれなかったのだ。内裏でも上皇様のところでも行事の多い時期で、何日もお見舞いの使者を出していなかったのが迂闊だった」
後悔なさりながらご病室にお入りになる。
枕もとでお声をおかけになるけれど、大君はもうお話しになれないようでお返事がない。
「これほどの重態におなりだったのか。誰も知らせてくれなかったのがつらい。私の気持ちを知らないわけではないだろう」
女房たちをお恨みになる。
山寺の阿闍梨や、病気回復のお祈りで有名な僧侶をたくさんお呼びになった。
すぐにお祈りを始めさせるとのことで、薫の君の家来たちも手伝いのために都からやって来る。
いろいろな人がばたばたと支度をする。
先ほどまでの心細い雰囲気とはがらりと変わって、山荘のなかは頼もしい騒がしさで満ちていく。



