野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

「もうひと月以上も山荘(さんそう)をお訪ねできていない」
(みや)様は気が気でなくて、今夜こそと何度もお思いになる。
でも、ちょうど内裏(だいり)の行事が立てつづけにあるときで、なかなかお出かけになれない。
宇治(うじ)姫君(ひめぎみ)たちは待ちくたびれていらっしゃるのだけれど。

夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様の姫君とのご結婚を、中宮(ちゅうぐう)様は強くお(すす)めになる。
「あなたのご将来のためには、やはりしっかりした家の婿(むこ)になって、妻の父という安定した後見(こうけん)役を得ることが大切ですよ。他に気に入った女性がいるのなら、私の女房(にょうぼう)として内裏に上がらせなさい。そうすればここでこっそりかわいがっておやりになれます。とにかく人目(ひとめ)のあるところでは、将来の(みかど)らしく重々しくお振舞いなさるように」

匂宮(におうのみや)様は拒否(きょひ)なさる。
「どうかもう少しお待ちください。私に考えていることがあるのです」
このままでは夕霧大臣様の姫君がご正妻(せいさい)ということになってしまう。
中君(なかのきみ)を二番目の妻や、まして女房のような(あつか)いはなさりたくないの。

中君とのご将来を真剣に考えておられるけれど、姫君たちはご存じないから、ただお悩みが深くなっていくばかり。
薫の君も、
<私が想像していたよりも軽いお気持ちだったようだ。今回ばかりは本気でいらっしゃると思って宇治へお連れしたが、姫君たちにとってお気の毒なことになってしまった>
と責任をお感じになる。
がっかりなさって、もう匂宮様のところへはお上がりにならない。

大君(おおいぎみ)へはたびたびお見舞いのお使者(ししゃ)派遣(はけん)なさる。
「少し回復なさいました」というお返事が女房からあり、ご多忙(たぼう)も重なって、五、六日お使者を(つか)わされない日が続いた。
<あれからどうおなりになっただろう>
とはっとなさって、お仕事もそこそこに山荘をお訪ねになった。