野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

中君(なかのきみ)荒々(あらあら)しい風音で目を覚まされた。
山吹(やまぶき)色や薄紫色の華やかなお着物をお召しで、寝起きのお顔は美しく赤らんでいる。
何もご心配事などない、お幸せそうな雰囲気でいらっしゃる。

父宮(ちちみや)様が夢に現れなさいました。ひどく何かを心配なさったご様子で、このあたりをふわふわとさまよっていらっしゃいました」
中君はいそいで姉君(あねぎみ)にご報告なさる。
「まぁ、不思議なこと。お亡くなりになったあと、どうにか夢でお会いしたいと思っているけれど、私の夢にはまったく現れてくださらないのです」
と、おふたりでひどくお泣きになった。

<近ごろは毎日父宮様を思い出しているから、私たちを心配して現れてくださったのだろう。どうしたらおそばへ参れるだろうか。女は成仏(じょうぶつ)できないというから難しいかもしれない>
大君(おおいぎみ)は死んだあとのことさえご心配になる。
中国には死んだ人の(たましい)を呼べるお(こう)があるそうなの。
それがほしいとお思いになる。