野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

(かおる)(きみ)がご出発なさるということで、お(とも)(あわ)ただしく準備を始める。
あら、女房(にょうぼう)たちの部屋からこっそり出てきて準備に加わった人がいるわ。
どうやらいつの間にか山荘(さんそう)の若い女房と恋人同士になっていたみたい。
昨夜の()物語(ものがたり)で、ぺらぺらとこんな話をしていたのよ。

匂宮(におうのみや)様が近ごろまったくお越しになっていないだろう。中宮(ちゅうぐう)様から外出を禁止されて、内裏(だいり)に閉じこめられていらっしゃるのだ。宮様を落ち着かせるために、中宮様は夕霧(ゆうぎり)大臣(だいじん)様の姫君(ひめぎみ)とのご結婚をお考えらしい。大臣様も長年望まれていたことだから、話はとんとん拍子(びょうし)に進んで、年内にはご結婚ということになるだろう。

宮様ご自身は()()ではないようだが、中宮様と大臣様に手を組まれたらお逃げにはなれまい。ふてくされておられるのか、内裏では美しい女房たちを相手に遊んでいらっしゃるとか。(みかど)や中宮様がご注意なさっても聞く耳を持たれないそうだよ。

それに比べて私の主人はめずらしいほど真面目でいらっしゃる。つまらない男だと言われておいでだったのに、ここにだけは熱心にお通いだから、よほど深いご愛情がおありなのだろうと世間も(うわさ)しているのだ」

この話を聞いた女房が他の女房たちにも話しているのを、大君(おおいぎみ)がお聞きになってしまったの。
<もうおしまいだ。ご立派な姫君とのご結婚が決まるまでの間、遊びで妹に手を出されただけだったのだ。あれほどご熱心だったのも、(かおる)(きみ)仲介(ちゅうかい)させるために、真剣な恋のように見せかけていらっしゃったのだろう>
そう思いこまれるとますますお胸が苦しくなって、よろよろと()せってしまわれた。