野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

時雨(しぐれ)がひどく降ってお(ひま)な日、匂宮(におうのみや)様は姉君(あねぎみ)(おんな)(いち)(みや)様のお部屋へご機嫌(きげん)(うかが)いに行かれた。
亡き(むらさき)(うえ)が特別におかわいがりになったこのご姉弟(きょうだい)は、六条(ろくじょう)(いん)でお育ちになったけれど、今はどちらも内裏(だいり)で暮らしていらっしゃる。

お部屋は落ち着いた雰囲気で、女房(にょうぼう)御前(ごぜん)には多く出ていない。
女一の宮様は絵巻(えまき)をご覧になっているところだった。
ついたてだけを間にしてご姉弟でお話をなさる。
最高に上品で()(だか)く、しかも優しい魅力もおありの姉宮(あねみや)様よ。
匂宮様はずっと、これほどの女性は他にいないだろうと思っていらっしゃった。

<しかし中君(なかのきみ)も、かわいらしくて上品だという点では負けていない>
こんなときでもつい中君を思い出して恋しくおなりになる。
お気を(まぎ)らわせようと、たくさん広げられた絵を見回してごらんになった。
女性が好きそうな物語の場面がいろいろと描かれている。

恋する男の住まいや、山里(やまざと)風情(ふぜい)ある家などをご覧になると、人物がご自分や中君に重なる。
姉宮様にお願いして絵巻を少し頂戴(ちょうだい)なさった。
<中君に差し上げよう>
とお考えみたい。