野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

山荘(さんそう)にお泊まりになるおつもりだったのに、またぞくぞくとお迎えがやって来た。
中宮(ちゅうぐう)様のお世話をする役所の長官(ちょうかん)までお越しになったわ。
「何をしているのです。早く都に帰っていらっしゃい」という中宮様のお言葉が聞こえてきそうよ。

中君(なかのきみ)にお会いできないことが(くや)しくて、匂宮(におうのみや)様はお帰りになりたくない。
それでも中宮様のご命令は絶対だもの。
仕方なく山荘にはお手紙をお送りになる。
いつものような風流(ふうりゅう)なお手紙ではなく、お気持ちを素直にお書きになった。

人目(ひとめ)が多いし、周りの人たちも(あわ)ただしくなさっているだろうから>
と、中君はお返事をお送りにならない。
田舎(いなか)育ちで両親もいない私が、ご立派な宮様とお近づきになろうというのが無理だったのだ>
ますます自信をなくされる。

都と宇治(うじ)で離れ離れだからお会いできない、というのはまだご納得がいく。
でも、こうしてすぐ近くにおいでになって、にぎやかな騒ぎは聞こえるのにお会いできない、というのはね。
つらくて悔しくて、中君は思い乱れなさる。