大君は匂宮様を大切な婿君として丁重にお扱いになる。
一方、薫の君の方は、新婦の身内のような人としておもてなしなさる。
それでも客席はこれまでどおりで、婿君とは違ってお部屋のなかへはお入れにならない。
<冷たいお扱いだ>
と薫の君は苦々しくお思いになる。
それもごもっともなので、大君はついたて越しにお会いになった。
「あなた様への思いはもうあふれそうだというのに、いつまでこんなふうにしかお会いくださらないのですか」
薫の君は切々とお恨みになる。
男性というものを少しずつお分かりになってきた大君だけれど、中君のご結婚を見て「やはり結婚は悩みの種」と結論をお出しになっている。
<やはり私は結婚はしたくない。愛した人を、必ずいつかひどいと恨むことになる。それが結婚なのだろう。お互いに憎むことなく、しこりも残さず、私をあきらめていただきたい>
大君のご意志は強いわ。
薫の君が宮様のことをお尋ねになると、大君はひさしぶりのお越しだと遠回しに打ち明けなさる。
<姉君としてどれほどご心配していらっしゃるだろうか>
大君がお気の毒で、
「私が拝見している宮様のご様子からして、中君へのご愛情は本物です。ご信頼なさってよいと存じますよ」
と保証なさった。
大君はいつもより親しくお話しになって、一段落したところでさりげなく切り上げようとなさる。
「このご結婚が落ち着いて、私の心配も収まりましたら、またお話しさせていただきましょう」
薫の君に絶対に近づかれたくないという頑固さは感じられないけれど、間の戸の鍵は厳重にかけられている。
無理やりこじ開けることができないわけではない。
<しかしそんなことをすれば、大君はどれほど嘆かれることか。何かお考えがあるのだろう。軽々しく他の男になびくような方ではないのだから、私はただお待ちしていよう>
おっとりとした薫の君は、お心をうまく静めなさる。
「もう少しだけお付き合いください。戸が間にあってはもどかしい。先日のようにお部屋に入れていただけませんか」
「いつも以上にやつれておりますから、あなた様にがっかりされてしまうのが嫌なのです。いっそがっかりされた方が気楽なはずですのにね」
ふふっとかすかにお笑いになった気配がした。
一瞬希望が見えたような気がして、薫の君のお心は震える。
<こうして翻弄されて、私はどうなってしまうのだろう>
結局、直接お会いすることはあきらめて、嘆きながらまたひとりでお休みになった。
匂宮様はまさかそんなことになっているとはご存じない。
「薫の君はこの家の主のような顔でのんびりしている。うらやましいことだ」
中君にそうささやいてお笑いになるから、
<姉君と薫の君はご夫婦ではないはずだけれど。どういうことかしら>
と女君は不思議に思っていらっしゃる。
一方、薫の君の方は、新婦の身内のような人としておもてなしなさる。
それでも客席はこれまでどおりで、婿君とは違ってお部屋のなかへはお入れにならない。
<冷たいお扱いだ>
と薫の君は苦々しくお思いになる。
それもごもっともなので、大君はついたて越しにお会いになった。
「あなた様への思いはもうあふれそうだというのに、いつまでこんなふうにしかお会いくださらないのですか」
薫の君は切々とお恨みになる。
男性というものを少しずつお分かりになってきた大君だけれど、中君のご結婚を見て「やはり結婚は悩みの種」と結論をお出しになっている。
<やはり私は結婚はしたくない。愛した人を、必ずいつかひどいと恨むことになる。それが結婚なのだろう。お互いに憎むことなく、しこりも残さず、私をあきらめていただきたい>
大君のご意志は強いわ。
薫の君が宮様のことをお尋ねになると、大君はひさしぶりのお越しだと遠回しに打ち明けなさる。
<姉君としてどれほどご心配していらっしゃるだろうか>
大君がお気の毒で、
「私が拝見している宮様のご様子からして、中君へのご愛情は本物です。ご信頼なさってよいと存じますよ」
と保証なさった。
大君はいつもより親しくお話しになって、一段落したところでさりげなく切り上げようとなさる。
「このご結婚が落ち着いて、私の心配も収まりましたら、またお話しさせていただきましょう」
薫の君に絶対に近づかれたくないという頑固さは感じられないけれど、間の戸の鍵は厳重にかけられている。
無理やりこじ開けることができないわけではない。
<しかしそんなことをすれば、大君はどれほど嘆かれることか。何かお考えがあるのだろう。軽々しく他の男になびくような方ではないのだから、私はただお待ちしていよう>
おっとりとした薫の君は、お心をうまく静めなさる。
「もう少しだけお付き合いください。戸が間にあってはもどかしい。先日のようにお部屋に入れていただけませんか」
「いつも以上にやつれておりますから、あなた様にがっかりされてしまうのが嫌なのです。いっそがっかりされた方が気楽なはずですのにね」
ふふっとかすかにお笑いになった気配がした。
一瞬希望が見えたような気がして、薫の君のお心は震える。
<こうして翻弄されて、私はどうなってしまうのだろう>
結局、直接お会いすることはあきらめて、嘆きながらまたひとりでお休みになった。
匂宮様はまさかそんなことになっているとはご存じない。
「薫の君はこの家の主のような顔でのんびりしている。うらやましいことだ」
中君にそうささやいてお笑いになるから、
<姉君と薫の君はご夫婦ではないはずだけれど。どういうことかしら>
と女君は不思議に思っていらっしゃる。



