野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

<秋ももうすぐ終わりだ。宇治(うじ)の景色はすっかり物寂しくなっているだろう>
時雨(しぐれ)が降って空に暗い雲が立ちこめた夕暮れ、匂宮(におうのみや)様はお心が落ち着かない。
<どうしようか、宇治へ行こうか>
ご自分だけでは思いきれずにいらしゃるところへ、(かおる)(きみ)がお越しになった。

「雨の宇治はどうなっているでしょうね」
宮様が迷っておられることなどお見通しで、薫の君がおっしゃる。
心強い味方が来てくれたと宮様はにっこりなさる。
薫の君を(さそ)って宇治へお出かけになった。
山道を進んでいくにつれ、宮様は中君(なかのきみ)がどれほど心細く待っているだろうかとご想像なさる。
「私も心苦しいのだ」
と薫の君に(うった)えて、おつらそうにしていらっしゃる。

黄昏(たそがれ)(どき)の薄暗く寂しい道に、雨が冷たく降りつける。
秋の終わりはひどく寒々しい。
雨に()れたおふたりのお着物から、いつも以上に強い香りが(ただよ)う。
この世のものとは思えないほど上品な香りで、山のなかに住む人たちはさぞや驚いたことでしょうね。