野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

<今夜はこちらに泊まって大君(おおいぎみ)とゆっくりお話がしたい>
と、(かおる)(きみ)は夕方になっても帰るそぶりをお見せにならない。
はっきりと求婚めいたことをおっしゃるわけではないものの、何か言いたいことがおありのご様子に大君は警戒(けいかい)なさる。
ついたて越しに直接お話しするのも辞退(じたい)なさりたいところだけれど、普段はご親切な方だもの。
冷たくお断りしてお部屋の奥に(こも)っていることもできず、結局出ておいでになった。

仏像(ぶつぞう)のあるお部屋に明るく(あか)りをともして、大君がお座りになっている。
薫の君との間の戸は開けてある。
(すだれ)がかかっているだけだから、大君はお姿が()けて見えないように、ついたてに隠れていらっしゃるの。
女房(にょうぼう)が薫の君のお部屋の方にも灯りをともそうとしたけれど、薫の君はお断りになった。
「なんとなく体がだるいので横になりたいのだ。失礼な姿があちらから見えてはいけないから」
とおっしゃる。

果物などがさりげなく出された。
薫の君のお(とも)たちは、少し離れたところでおもてなしを受けている。
こちらの方は静かで、おふたりはしんみりと語り合われる。
大君はうちとけたご様子はお見せにならないけれど、やさしくかわいらしい話し方をなさる。
ますます薫の君のお心は()かれていく。