野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

匂宮(におうのみや)様は、この先のことをお考えになるとお心が重い。
今夜はかなり強引(ごういん)なやり方で宇治(うじ)へお越しになったし、今ごろ内裏(だいり)では中宮(ちゅうぐう)様がお怒りのはず。
<なんとか結婚を成立させたが、都と宇治の()()を続けることは現実的に難しいだろう>
あらかじめ中君(なかのきみ)に分かっておいていただかなければと、ご自分の置かれた状況を正直にお話しになった。

「中宮様は、親王(しんのう)である私がたびたびこっそりと宇治へ出かけることをよくお思いではありません。今夜こちらへ(うかが)うのが遅くなったのも、実はそのことでお(しか)りを受けていたからなのです。この先、もし私がしばらくこちらに来られなかったとしても、けっして不安にならないでください。

私はいつもあなたのことを思っています。けっしてあなたを軽んじているわけではない。そうだとしたら、今夜だってこんなふうに無理をして来てはいません。あなたが私の愛情を疑って苦しんではいけないと、身を捨てる覚悟でやって来たのです。しかし、いつもうまく出てこられるとは限らない。やはり宇治は遠い。近いうちに都にお迎えしましょう」

熱心におっしゃるけれど、
<今から言い訳しておかれるのは、浮気心がおありだからだろう>
と中君は疑って、よそよそしくなさる。
宮様のご愛情だけが頼りのご結婚だから、宮様のおっしゃることやなさることのひとつひとつにお気持ちが左右される。
いろいろとおつらいことが多くてお(なげ)きになる。