野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

宇治(うじ)では大君(おおいぎみ)が不安になっていらっしゃる。
(かおる)(きみ)からお祝いのお着物などが届いているのに、肝心(かんじん)匂宮(におうのみや)様が夜になってもお越しにならない。
内裏(だいり)中宮(ちゅうぐう)様に引きとめられていて、今夜はお(うかが)いできないかもしれません」というお手紙だけが届いた。
<あぁ、もうだめだ。妹の結婚は成立しないのだ>
絶望(ぜつぼう)なさっているところへ、夜中近くなって匂宮様がご到着なさった。

荒々(あらあら)しい風のなか馬を飛ばして、上品でお美しい宮様が、すばらしい香りを(ただよ)わせながらいらっしゃったのよ。
大君が感動なさらないはずがない。
新婦の中君(なかのきみ)は少しずつ匂宮様に慣れて、妻らしいご感情も()()えている。

柔らかい雰囲気におなりになった中君は、とてもお美しく(おんな)(ざか)りでいらっしゃる。
しかも薫の君から贈られた立派なお着物をお召しだから、
<この世にこれほど美しい人はいない>
と匂宮様はおみとれになる。

美人を見慣れた宮様でさえそう思われるくらいだから、山荘(さんそう)(ろう)女房(にょうぼう)たちはみっともないほど満面(まんめん)()みで言う。
「こんなにすばらしい姫様ですもの、そこらの男とご結婚なさっていたらどれほど(くや)しかったことでしょう。(とうと)親王(しんのう)様とご結婚なさって、本当にようございました」
その一方で、(かおる)(きみ)とのご結婚を(しぶ)っておられる大君を悪く言う。