野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

(かおる)(きみ)なら味方になってくれるはずだ>
匂宮(におうのみや)様はほっとしてご相談なさる。
「どうしたらよいだろう。三日目の夜だから(うかが)わないわけにはいかないのに、こんなに暗くなってしまった」

中君(なかのきみ)に本気でいらっしゃるかどうかがこれで分かるだろうと、薫の君はわざと冷たいことをおっしゃる。
「ひさしぶりに参内(さんだい)なさったのですから宿直(とのい)なさるしかありますまい。泊まらずにお帰りになったら、中宮様はますますお怒りになりましょう。中宮様が宮様にお説教なさったと、先ほど女房(にょうぼう)たちから聞きましたよ。ご仲介(ちゅうかい)役をしたことで私までお(しか)りを受けるのではないかとひやひやしております」

「意地悪なことを言うではないか。中宮様は私の女好きを困ったものだと(おお)せになったが、そんなことは世間が勝手に言っているだけだ。実際は違う。そうやってあれこれ(うわさ)される窮屈(きゅうくつ)な身分こそが困りものだというのに」
親王(しんのう)という(とうと)いご身分が邪魔(じゃま)だと本気でお思いになっているみたい。

お気の毒になって薫の君がおっしゃる。
「今夜宇治(うじ)へお行きになってもならなくても、これまでのことが親王様として軽率(けいそつ)なお振舞いであることに変わりはありません。でしたら今夜の中宮様のお叱りは、私が代わりにお受けいたしましょう。ご到着がこれ以上遅くなってはいけません。馬でお行きなされませ。ますます世間の噂になってしまわれるでしょうが」

薫の君がおっしゃるとおり、すっかり夜が()けてしまっている。
匂宮様は思いきって馬でご出発なさった。
「お(とも)はいたしません。こちらに残って中宮様へうまく申し上げておきましょう」
とおっしゃって、薫の君は内裏にお残りになる。