野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

匂宮(におうのみや)様は山荘(さんそう)に到着なさると、(かおる)(きみ)がお教えした戸のところにお立ちになった。
そこは姫君(ひめぎみ)たちのご寝室へ向かう戸で、(べん)(きみ)(かおる)(きみ)をお待ちしている。
宮様が(おうぎ)を鳴らして合図なさると、すぐに弁の君が現れた。
宮様を薫の君と勘違いしてご寝室へご案内していくの。

<薫の君はいつもこうして案内させているのか。女房(にょうぼう)がずいぶん物慣れている>
ぞくぞくしながら匂宮様が中君(なかのきみ)のいらっしゃるご寝室へお入りになったころ、大君(おおいぎみ)はなんとかして薫の君を追い払おうとなさっていた。
お気の毒で、このまま何も知らせず(うら)みを買うのもよくないと、薫の君は打ち明けなさる。

「実は今、匂宮様もこの山荘にお越しになっているのです。あなた様にご挨拶(あいさつ)もなさらず、中君のところへ(しの)びこまれたようですね。おそらく(ろう)女房(にょうぼう)でも味方におつけになったのでしょう。私の立場がなくなってしまいました。あなた様に振られ、中君も他の男に取られた私を、世間は笑い者にするでしょうね」

思いもよらないことを告げられて大君はめまいがなさる。
「だまし()ちのお手伝いを平気でなさるのですね。あなた様をご信頼して、妹の婿(むこ)になっていただきたいなどとお願いしていた呑気(のんき)な私を馬鹿(ばか)になさっていたのでしょう。それでこんなことをしてやろうと思いつかれたのですね」
言葉にできないほどひどい方だと震えていらっしゃる。