野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

<九月は結婚によくない月だから、今月中に>
(かおる)(きみ)宇治(うじ)へお越しになった。
ついたて越しに直接お話ししたいとお伝えなさったけれど、大君(おおいぎみ)はお断りになる。
「気分がすぐれませんので、そちらまで出てまいれません」
女房(にょうぼう)を通じてお返事なさった。

「思ってもみないほど頑固(がんこ)でいらっしゃいますね。女房たちが不審(ふしん)に思いますよ」
薫の君は紙に書いて女房にお預けになった。
父宮(ちちみや)様の()が明けたことで動揺(どうよう)しております。かえって気持ちが沈んでしまいましたからお話しできません」
大君はまた女房を通じてお答えなさった。

大君のご態度を(うら)めしく思って、薫の君は(べん)(きみ)をお呼びになった。
あれこれおっしゃるのを、弁の君はごもっともだとお聞きしている。
心細い生活に疲れきった弁の君や他の女房たちにとっては、薫の君だけが希望の光なの。
どうにかおふたりがうまくいって、大君が都へ迎えられる日が来てほしいと願っている。
そのためなら大君のお気持ちは()(つぎ)で、
「薫の君が次にお越しになったときには、ご寝室にお入れしてしまいましょう」
と女房同士で決めてしまっていた。