野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

女房(にょうぼう)たちがひそひそと話しているようだけれど、何かあったのかしら>
と思いながらお休みになった中君(なかのきみ)は、やっと姉君(あねぎみ)がご寝室にお越しになったので安心なさる。
横になられた姉君に、布団(ふとん)代わりのお着物をかけてあげようとなさったの。
すると姉君のお体から、まぎれもなく(かおる)(きみ)(うつ)()(にお)い立った。

<以前に薫の君からお着物をいただいた家来が、香りが立派すぎると言って困っていた。あれと同じ香りだ。姉君は薫の君と一晩ご一緒だったのだ>
はっとお気づきになると、姉君に何と声をおかけしたらよいか分からなくて寝たふりをなさった。

日が高くなっても大君はご気分が悪いとおっしゃってお起きにならない。
<実際には何もなかったけれど、私と薫の君が深い関係になったと中君も思っているだろう>
と恥ずかしくていらっしゃる。
(はち)(みや)様の一周(いっしゅう)()はもうすぐですのに、こんなときにご病気とは。ご準備が進まず困りましたね」
と女房たちは文句を言っている。
中君も、
(ひも)(かざ)りの最後の仕上げは私にはできません。やはり姉君でなければ」
とお願いなさるので、暗くなったころにやっとお起きになった。
ご一緒に紐飾りをお作りになる。

薫の君からお手紙が届いたけれど、
「今朝から体調を(くず)しまして、お返事は失礼させていただきます」
と女房に代筆(だいひつ)させなさった。
「お返事もお書きにならないなんて、子どもっぽくていらっしゃること」
おふたりが男女の関係になったと思い込んでいる女房たちは、これにも文句を言う。