野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

夜になるとますます風音が強くなった。
ひとり寝をなさっている(みや)様がさすがにお気の毒で、中君(なかのきみ)は物越しにお声をおかけになる。
宮様はありとあらゆる神様に(ちか)って、永遠の愛をお約束なさった。
<女性を口説(くど)きなれておいでだこと>
中君は信用なさらない。

それでも宮様には女性を魅了(みりょう)する雰囲気がおありになる。
離れ離れでいらっしゃる間は(うら)めても、お会いになればこの雰囲気に負けてしまわれる。
<とても恨みつづけることはできない。きっと許してしまうだろう>
と中君はお話を聞いていらっしゃる。

「これまでだって頼りないご愛情でしたのに、どうして将来のお約束を信じられましょう」
中君は小さな声でつぶやかれた。
やっと聞けたお返事がそれで、宮様はよけいにもどかしくなってしまわれる。
「私たちの関係が短いものとお思いなら、今このとき、私を信じてください。姉君(あねぎみ)のことでお分かりになったでしょう、この世などつまらないものです。あまり深くお考えになってはいけません。私につらい思いをさせないで」
あれやこれやとおっしゃるけれど、
「気分が悪くなってまいりましたので」
と中君はお部屋の奥へ入ってしまわれた。

女房(にょうぼう)たちがどう見ているだろうかと宮様は気まずくて、(なげ)きながら夜を明かされる。
<恨まれても仕方がないが、それにしてもあまりにご冷淡(れいたん)ではないか。しかし中君は、私がなかなか来られないうちに姉君まで亡くして、これ以上につらい思いをなさったのだ>
中君に同情するお気持ちはもちろんおありなのよ。