野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

匂宮(におうのみや)様を中君(なかのきみ)と結びつけたのは私だ。つらい思いをおさせしてしまった>
(かおる)(きみ)は後悔しながら、大君(おおいぎみ)のために一晩中お(きょう)をお読みになる。
まだ夜が深く、雪でひどく寒いのに、たくさんの人の声が聞こえてくる。
馬のいななきも聞こえた。
「誰がこんな夜中に雪のなかをやって来たのだろう」
山荘(さんそう)(こも)っている僧侶(そうりょ)たちも驚く。

お越しになったのは匂宮様だった。
馬にお乗りになるための質素なお着物が、雪でひどく()れている。
戸をお叩きになる音で薫の君は宮様だとお気づきになった。
ご対応は女房(にょうぼう)(まか)せて、ご自分はお部屋の奥に隠れてしまわれる。
宮様は中君(なかのきみ)がご心配で、この雪のなかを無理して宇治(うじ)までいらっしゃったの。

ここしばらくのおつらさが消えてもよいはずだけれど、中君はお会いしようとはなさらない。
姉君(あねぎみ)は宮様の薄いご愛情を(なげ)いていらっしゃった。そのままお亡くなりになってしまったのだから、今さら優しくしてくださったところでもう遅い>
でも女房たちがそれでよいと言うはずもない。
口々に説得されて、物越しでお会いになる。

宮様は必死に弁解(べんかい)なさるけれど、中君はただぼんやり聞いていらっしゃる。
ほとんどお返事もおできにならない。
「私も死んでしまいたい」というお気持ちだけが伝わってくる。
宮様は長い間放っておいてしまったことをすまなくお思いになる。