空を覆った厚い雲から雪が降りしきる日、薫の君は一日中ぼんやりなさって、気づけば夜になっていた。
世間では十二月の月は寒々しいものとして嫌われている。
その月が華やかに輝いているのを、簾を巻き上げてご覧になる。
山寺の鐘の音がかすかに聞こえる。
<今日も終わっていく。あの月は大君のいらっしゃるところに沈むのだろうか。私も追いかけていきたい。どうせこの世など仮の住まいで、長くいるところではないのだから>
風が激しいので窓を閉めさせなさる。
外では川の氷が月光に照らされてきらきらとしている。
<都の屋敷をどれほど立派に飾ったところで、とてもこの景色には敵わないだろう。大君が生きていてくださったらご一緒に眺めたかった>
何をご覧になっても大君を思い出される。
<あの雪の山に入れば死ねる薬が見つかるかもしれない。探しにいこうか。あるいは、今すぐ死んだら仏教の神髄を教えてやるという鬼でも現れてくれないものか。それが知りたいからという口実で堂々と死ねる>
仏教をそんなふうに利用しようだなんて、罰当たりなお考えだこと。
女房たちを近くへお呼びになって、大君の思い出話などをおさせになる。
おっとりと落ち着いた薫の君のご様子に、若い女房はうっとりしている。
弁の君は、
<大君はこの方とお幸せになられるはずだったのに>
と悔しくて、つい申し上げる。
「ご病気が重くなられましたのは、やはり匂宮様のことが原因と存じます。中君が思いがけないご結婚をなさいましたが、宮様の頼りないご愛情を大君は心配していらっしゃいました。妹君を世間の笑い者にはしたくない、しかしそんなふうに心配していることをご本人には知られたくないと、ただおひとりでお悩みになっていたのでございます。
そうしているうちにちょっとした果物さえ召し上がれなくなって、弱りに弱ってしまわれました。表面上はさりげなくお振舞いになっても、お心のなかではどこまでも思いつめてしまうご性格でいらっしゃいまいしたから。亡き父宮様のご遺言に背いてまでご結婚おさせしたのに、妹君をお気の毒な境遇にしてしまったとご自分を責めておられたのでしょう」
弁の君はさらに、大君が姉君らしく中君を励まされたお言葉などを思い出して話すものだから、誰もかれも泣いてしまう。
世間では十二月の月は寒々しいものとして嫌われている。
その月が華やかに輝いているのを、簾を巻き上げてご覧になる。
山寺の鐘の音がかすかに聞こえる。
<今日も終わっていく。あの月は大君のいらっしゃるところに沈むのだろうか。私も追いかけていきたい。どうせこの世など仮の住まいで、長くいるところではないのだから>
風が激しいので窓を閉めさせなさる。
外では川の氷が月光に照らされてきらきらとしている。
<都の屋敷をどれほど立派に飾ったところで、とてもこの景色には敵わないだろう。大君が生きていてくださったらご一緒に眺めたかった>
何をご覧になっても大君を思い出される。
<あの雪の山に入れば死ねる薬が見つかるかもしれない。探しにいこうか。あるいは、今すぐ死んだら仏教の神髄を教えてやるという鬼でも現れてくれないものか。それが知りたいからという口実で堂々と死ねる>
仏教をそんなふうに利用しようだなんて、罰当たりなお考えだこと。
女房たちを近くへお呼びになって、大君の思い出話などをおさせになる。
おっとりと落ち着いた薫の君のご様子に、若い女房はうっとりしている。
弁の君は、
<大君はこの方とお幸せになられるはずだったのに>
と悔しくて、つい申し上げる。
「ご病気が重くなられましたのは、やはり匂宮様のことが原因と存じます。中君が思いがけないご結婚をなさいましたが、宮様の頼りないご愛情を大君は心配していらっしゃいました。妹君を世間の笑い者にはしたくない、しかしそんなふうに心配していることをご本人には知られたくないと、ただおひとりでお悩みになっていたのでございます。
そうしているうちにちょっとした果物さえ召し上がれなくなって、弱りに弱ってしまわれました。表面上はさりげなくお振舞いになっても、お心のなかではどこまでも思いつめてしまうご性格でいらっしゃいまいしたから。亡き父宮様のご遺言に背いてまでご結婚おさせしたのに、妹君をお気の毒な境遇にしてしまったとご自分を責めておられたのでしょう」
弁の君はさらに、大君が姉君らしく中君を励まされたお言葉などを思い出して話すものだから、誰もかれも泣いてしまう。



