野いちご源氏物語 四七 総角(あげまき)

あっけなく夜が明けた。
薫の君のお(とも)がお庭で(せき)(ばら)いして、お目覚めになるよう合図をする。
馬が高らかに鳴くのもいかにも遠出(とおで)をしているという感じで、薫の君にはめずらしくておもしろい。

明るくなった方の戸をお開けになると、女君(おんなぎみ)も少し近づいていらっしゃった。
ご一緒に朝の空をご覧になる。
おふたりともとてもお美しいの。
「何か特別なことがしたいというわけではないのです。ただこうして月や花を一緒に(なが)めて、(はかな)い世の中のことを語り合いたい。そういうふうにあなたと暮らしたいのですよ」
やさしくお話しになるので、女君はだんだん恐ろしさも収まってきた。
「直接お会いするのは恥ずかしゅうございますけれど、物越しでよろしければ、心を開いてお話しいたしましょう」
とお返事なさる。