【完】ロマンスに、キス




泣くなよ、って言われるけれど、しょうがない。

佐野の前だと、あたしはほんとに、すぐ泣いてしまう。

隠したくても、隠せない。



佐野は少し困ったように眉を下げて、それから――いつもの不機嫌さとは違う、優しい顔であたしを見つめた。



「俺と付き合って」



ぎゅっと握られた手から、じんわりと佐野の体温が伝わる。


もしかしたら、佐野だって、緊張してるのかもしれない――そんなことを、ふと思った。



口は悪いし、甘い言葉なんて絶対に言ってくれない。

あたしが泣くまで、なかなか本心を見せてくれない。

でも、それでも結局、佐野は優しくて、あたしを素直にさせてくれる。



――こんなあたしより、もっともっと、いい子がいるんだろうな。



そう思ってしまう自分が情けなくて、涙がまたひとつ、頬を伝う。



「……ほんとに、あたしでいいの?可愛いのは顔だけだし、今みたいにすぐ喧嘩しちゃうしっ……」



声は震えて、嗚咽が混じる。


好きでいてほしいなんて、ほんとはひとつも自信なんてない。

でも、どうしても思ってしまう。


好きでいてほしい。

あたしを選んでほしい。

このまま、佐野はそばにいてほしい。