【完】ロマンスに、キス




「付き合ってないって、ほんとにそう思ってんの?」



佐野の声は、少し尖っている。

けれど、そこに動揺や疑いが混じっているのが、なんとなくわかる。



「ちゃんと言ってくれないとわからないって言った」



お決まりの舌打ちをかますと、ドカッと座り込む。

その背中は、相変わらずぶっきらぼうで、わざとらしいくらい自由気まま。

あたしは、そんな態度にむっとして、隣に座る気にもなれず立ったまま。



「ガキ」



佐野が、つぶやくように漏らしたその言葉に、聞き逃さず反応してしまった。

カチン、と音がして、頭の中で赤い線が何本も引かれる。



「ガキはそっちでしょ」



つい口が滑って、言い返してしまう。

言った瞬間、鋭い目で睨まれ、心臓がぎゅっとなる。

けれど、負けるわけにはいかないと、あたしも睨み返す。


また、喧嘩だ。
会うたびに、こうして喧嘩してる。



素直になればいいのに。
心の中で、何度も何度も繰り返す。



あたしから、「付き合って」って言えればいいのに。

佐野が気づいてくれないから、とか、全部佐野のせいにしてしまうんじゃなくて。



ちゃんと、自分から、言えたら――